2017年度第一回奨学金授与式&公開記念講演

在日韓国奨学会・「国際韓朝研」共催 公開記念講演会

「憲法上の“日本国民”とは何か                            ―その現行解釈の批判と提案―」

在日韓朝鮮大学人協会 会長 徐 龍 達   (在日韓国奨学会 名誉会長)

はじめに ― わたしの生い立ち=差別体験から市民運動へ

進学差別、奨学金差別、就職差別などから、在日韓国奨学会の創立(1956年8月)、韓朝鮮大学人協会の結成(1972年10月)、国公立大学教員任用運動(1974年10月)、定住外国人の地方参政権運動主張(1975年8月、共同新聞)などへの展開・開拓。

「歴史健忘症」と「論理欠乏症」の日本に、どう対応するのか。歴史教育のごまかし。

現在の緊急課題:朝鮮の非核化問題→「韓奨ニュース」No.142(2016年8月)での主張(韓朝鮮戦争特需潤沢を「朝・日平和条約」への還元に)

P.F.ドラッカー『断絶の時代』、脳内革命、発想の転換の必要性

1.差別行政の根源「国民」概念の歪曲を正そう

①憲法前文「日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し・・・」We, the Japanese People, acting through our duly elected representatives in the National Diet、・・・                                 国民とは、ある国に所属する国籍をもつ人(national)をさすので、Japanese Peopleは「日本の人々、人民」とすべきではないか、ピープルはその地に住む「住民」の意味が強いし、必ずしも「国籍」を強要する用語ではない。

②日本政府が削除したマッカーサー憲法草案第16条の再認識

Aliens shall be entitled to the equal protection of law.「外国人は平等に法律の保護を受ける権利を有す」となっていて、定住外国人の人権が保障されていたといえる。

③定住外国人の地方参政権を否認するとされる第15条1項

「公務員を選定し、及びこれを罷免することは、国民固有の権利である」The People have the inalienable right to choose their public officials and to dismiss them.  Inalienable right を「固有の権利」と訳しているのもマチガイで、「人びと」から奪ってはならない、または不可譲の(inalienable)権利を意味している。したがって、「人びとは公務員を選び、罷免する、奪われることのない権利をもっている」となる。日本人に限定する「国民固有の権利」など、もってのほかというべきであろう。国民用語には、何か別の権力がある響きがある。1995年2月28日、最高裁は定住外国人の地方参政権を憲法が禁じてはいないと判決した。

領土欲から主張する「日本固有の領土」もその類で、歴史上北海道も沖縄も奪い取った領地であった。大日本帝国による侵略で拡大したが、中世からの本州のみが「固有の領土」であった。日本政府はウソつきなのか?

2.憲法上の「国民」概念現行解釈

日本憲法上、「日本国民の要件」第10条のみがnationalで正解。Peopleを「国民」と歪曲した条文はあとすべてに亘る。

第11条(基本的人権)、第12条(自由・権利の保持義務)、第13条(個人尊重)、第14条(法の下の平等)、第15条(公務員の選定・罷免)、第25条(生存権)、第26条(教育を受ける権利)、韓朝鮮人らは義務教育の必要なしとしたり。進学差別もあった。第27条(勤労の権利)、第30条(納税の義務)これだけは差別なく徴収した。            以上の条文上の「国民」はPeopleの訳語であった。

地方自治法第10条①「市町村の区域内に住所を有する者は、当該市町村及びこれを包括する都道府県の住民とする。」(②それゆえ、市民税を納めなさいと)             ピープルはリンカーンの政治理念にも使用「人民の、人民による、人民のための政治」Government of the people, by the people, for the people(Gettysburg Address)、ピープルは本来、居住地の住民、大衆を意味し、国籍とは関係ないことば。

徐の解する国民=「国を構成する住民」。「国民主権」用語を排し、「住民主権」の国際化をはかろう。これまでの国民(日本籍をもつ者)を「日本人」に特定したい。

3.日本の国際化と「国民」概念の再検討と拡充(徐提案)

1910年、日帝による韓国併合、「帝国臣民」の発生、参政権も認められたが、敗戦後一転(1945年12月7日)「当分の間停止する」付則が60年以上も継続。憲法上の解釈も定住外国人(Permanent Alien Residents)の人権を阻害してきた。            第2次世界大戦後、国際人権の潮流、国際人権規約一般化。「国民」を「国籍基準」から「居住基準」や「住民基準」へ転換、在日外国人を一般外国人(短期滞在者)と定住外国人(徐造語 1977年2月17日付「朝日新聞」文化欄)に区分。

★日本国籍をもつ日本人+定住外国人=(拡大された)「日本国民」(社会構成員)

日本が遅れて、世界で50番目に批准した国際人権規約のB規約第25条は、「すべての市民」(Every citizen)にいかなる差別や制限もなしに「直接に、または自由に選んだ代表者を通じて政治に参与すること」を認めている。                       憲法第15条「国民固有」の権利に当然「住民」としての定住外国人も含まれる。

★そうなれば?日本は国際的に信頼でき、尊敬される国に脱皮できる。          憲法前文にある「恒久の平和を念願」し、「国際社会において、名誉ある地位を占めたい」ことが実現できる。

[参考文献]

A.「国民」概念に論及した徐龍達編著

1)『韓国・朝鮮人の現状と将来』社会評論社、31~34頁。

2)『共生社会への地方参政権』日本評論社、26~28頁。

3)徐還暦記念論集『アジア市民と韓朝鮮人』日本評論社、21~25頁。

4)徐古希記念論集『21世紀韓朝鮮人の共生ビジョン』日本評論社、141~144頁。

5)『在日韓国・朝鮮人と人権』(新版)有斐閣、260~270頁。

B.英文で正しく読む日本国憲法の本

1)島村力『英語で日本憲法を読む』グラフ社2001年。

2)柴田元幸『現代語訳で読む日本の憲法』アルク社2015年。

(以上図書館などでごらん下さい。)

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